本研究では、古墳築造南限域である鹿児島県大隅半島において古墳の調査を実施している。本地域は古墳築造の境界域として古墳築造の本質的な意義を研究しうる重要な位置にある。しかし、この地域の古墳調査事例は少なく、その実体解明は現在、地域側の視点から見直しが必要である古墳時代研究・国家形成過程研究の上に重要な鍵を握ると考える。 1.昨年度からの継続で鹿児島県肝属郡串良町岡崎18号墳において発掘調査を実施した。本年度は、墳丘裾部に取り付く地下式横穴墓3基を検出し、2基は玄室内を含む全体調査を実施した(1号・2号)。1基は竪坑部のみの調査である(3号)。本地下式横穴墓は上部から出土した土器によって年代を確定できる稀少な例となった。その年代は5世紀前半で地下式横穴墓の中では最古段階に位置づけられる。規模は大隅で最大規模であった。さらに1号・2号とも玄室内ではこの地域の有力首長墳にしか採用されていない花崗岩製の石棺を地下式横穴墓内で初めて確認した。2号地下式横穴墓は玄室内・石棺内全体を赤色顔料で真っ赤に彩る初めての事例であった。また、朝鮮半島製・系鉄製品である鉄〓やU字形鍬鋤先、奄美以南の南海産イモガイ製貝輪といった広域交流を資料が出土した。これらの成果から古墳築造南限域の首長層の社会構造・地域間交流などの研究が可能となった。 2.新たに岡崎20号墳の発掘調査に着手した。その結果、本墳が46m級の前方後円墳であること。古墳時代前期後半に位置づけられることなどが判明した。また、埋葬施設として粘土槨を確認し、その上部から二重口縁壺などを確認した。前期古墳を鹿児島で初めて確したことにより、南限域の古墳の出現と展開の研究に関する重要な資料を入手することができた。 3.県内に収蔵されている古墳時代資料の調査を行い、データ化を進行している。
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