研究計画に基づき、国内外での資料収集を行い、学会・研究会での報告、論文の執筆を行った。それらにおいて、明らかにした点は、以下の通りである。 1.1950年代に始まる日米繊維摩擦の前提となる、復興期(1945-55年)日本の綿紡績企業の状況。財閥解体・過度経済力集中排除法・企業再建整備のプロセスにおいて、日本の綿紡績企業は、戦時経営を精算し、戦後経営に必要な企業組織・財務の再編を行った。このことが国際競争力獲得の前提条件の一つとなる。 2.戦後の国際貿易体制、GATT制定に関わる諸問題、とりわけそれらを主導したアメリカの意図について論点整理を行った。 3.日本の輸出自主規制に始まる日米繊維摩擦が、どのような政治的・経済的含意を持ちつつ発生し、定着したのかを考察した。 4.近年進展しつつある地域経済統合(たとえば、アジアの経済統合)において、「貿易摩擦」ないしは「産業調整」はどのような意味を持つのかを理論的に考察し、具体的な事例として日本の繊維産業のアジアでの展開の事例について考察した。
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