今年度は、国内外のサービス・マーケティングの文献を中心にレビューすることで、サービス組織の特徴を明らかにした。その上で、日本の代表的なIT企業6社におけるコンサルティング部門を対象とした事例分析を実施した。各社において高いレベルのスキルを持つコンサルタント10名に対してヒアリング調査を行い、コンサルティング・サービスに関する知識やノウハウをどのように獲得し、共有し、制度化しているかに関するデータを収集した。収集したデータをグラウンデッド・セオリー・アプローチを使って分析したところ、以下の点が明らかになった。 1.コンサルティング・サービスに関する知識獲得 コンサルタントは、主に、実践の中で知識を獲得する傾向にあるが、人材の短期育成という課題に対応するために、ケースメソッドを使った教育訓練やナレッジ・データベースによってスキルの獲得がサポートされていた。 2.コンサルティング・サービスに関する知識共有 各部門では、ナレッジ・データベースを備えていたものの、知識の収集という点で課題を抱えていた。また、知識を共有することで、「自らの力で問題解決する能力」が低下してしまう「知識共有のジレンマ」という問題が存在していた。 3.コンサルティング・サービスに関する知識制度化 各部門では、コンサルタントが有するノウハウを「メソドロジー」という形で蓄積していた。ただし、自らがメソドロジーの開発に携わったり、メソドロジーをカスタマイズするという姿勢がないと、ノウハウを使いこなせないことが指摘された。これらの知見を基に、コンサルティング・サービスの知識創造に関するモデルを作り上げた。
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