今年度は、2つの実証研究を行った。以下、概略を説明する。 1)大手不動産仲介業の営業担当者調査 大手不動産仲介業の営業担当者を対象とした質問紙調査を実施し、優れた業績を上げている営業担当者がどのような知識特性をもち、どのような経験を通してそれらの知識を獲得したかを検討した。その結果、優れた営業担当者ほど、「顧客を慎重に見極め、情報収集に積極的であり、スピーディな対応を心がけ、臨機応変な対応をするために事前準備を怠らず、紹介客の依頼に積極的である」ことが明らかになった。また、優れた営業担当者ほど、「困難な目標達成、上司からの評価、責任のある仕事の達成」といった経験を積む傾向にあった。これらの分析結果を基に、不動産サービス企業における知識獲得モデルを提示した。 2)ITコンサルタントに対する定性的調査 中小企業のIT革新を担う優れたコンサルタント12名に対するヒアリング調査を実施し、グラウンデッド・セオリー・アプローチを使って彼らの知識と経験を分析した。その結果、優れたITコンサルタントは、「経営者の思い」と「現場の思い」をつなぎ、目標や問題を共有することに重点を置いていた。また、「業務プロセス」「人材育成」「モラール(志気)」「短期的な問題解決」「中長期的な視点」を重視する傾向にあった。さらに、ITコンサルタントは、「ゼロベースの課題」「深いコミットメントを要する課題」「専門知識習得のための課題」といった経験を通して知識を獲得していた。これらの分析結果を基に、コンサルティングサービスにおける知識獲得モデルを提示した。
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