住居・オフィス・店舗が混合する都市型集合住宅の典型事例として「駿河台の集合住宅ilusa」を中心に調査・研究を行った。入居者へのヒアリング結果の概要は次の通りである。1)間取りについて:壁で部屋を仕切らないilusaの間取りは使い方の自由度の高さから住居・事務所利用者ともに非常に評価は高く「広々として気持ちがいい」「部屋全体が広く見える」という意見が多かった。2)建物外観について:住宅特有の生活感を感じさせないilusaのカーテンウォールの外観は、住居・事務所利用者ともに評価が高い。特に事務所利用者にとって建物の外観デザインはそのまま会社イメージにつながるという点で非常に重視されていた。3)室内の設備について:広さの割に充実した設備(台所ガス3口、乾燥機付浴室など)は一見事務所には必要ないと考えられるが実際はそうではなく、台所は「スタッフの交流を図るため定期的に料理を作る」、浴室は「遅くまで仕事をしたときに使いたい」などの要望も高い。4)玄関について:玄関が小さいという不満は特に事務所利用者から多く、傘立てと靴を置くと玄関が一杯になる状況であった。総論として集合住宅ilusaの事例調査を通して、千代田区における都心居住地としての可能性を見いだすことができた。また今後、都心の集合住宅を計画するにあたっては、住居としても、また事務所としても利用できるような可変性のある空間構成と間取りの自由度が求められること、生活空間としての最低限必要である「居住ユニット」について、ある程度明らかにすることができた。 さらに本研究の一環として、近代における都市型小規模住宅の設計者として挙げられる建築家ル・コルビジェが設計した一連の住宅作品について文献調査を行った。容積と開口部との関係を数値的視点「開口比率」より検討して、歴史的変遷とその傾向を明らかにした。
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