医療経済評価における効果としての健康の価値を評価する方法として、QALY(Quality Adjusted Life Years)を算出するための効用値の測定やWTP(Willingness to Pay)を用いた便益の測定方法について検討した。特に医療における公平性や利他性をアウトプットの1つとして測定することに関して検討を行った。 関連する文献レビューの結果から、利他性を測定する方法として、WTPを用いた方法が多く用いられており、3つのフレームで評価すべきと考えられた。第1はある医療行為に対して個人が全額自己負担で支払う場合のWTPで、これは個人にとっての効用と考えられる。第2は医療保険の給付対象にするための保険料に関するWTPで、個人のリスク選好が考慮される。第3は税金により賄うための税額上昇に関するWTPで、ここで利他性が考慮される。またQOL尺度を用いて利他性を測定しようとした試みとして、個人の健康状態の変化と集団の健康状態の変化の価値付けを行い、検討しているものもあった。また、医療以外の分野として環境経済の領域では、個人が感じる効用を自分が利用できるものと利用できないものに分けて考えることが示されていた。 健康状態の評価に関する調査としてA大学病院の看護師を対象にWTPを用いて稀少疾患である慢性骨髄性白血病の遺伝子診断および治療に関する便益の推定を行った。結果として薬剤の適性を判断するための遺伝子診断および薬剤の双方について高い値であった。また、EQ-5Dの健康状態記述方法を用いて利他的効用を測定する面接調査を実施した。 平成15年度は調査対象を広げ、利他性に関するWTPとQOL尺度を用いた調査を実施する予定である。
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