本研究の目的は、多段に懸架された光学素子で構成された光干渉計を安定に動作させ、高い防振特性を実現することである。最終年度である平成16年度には、これまでに順次組上げられてきた各要素を組み合わせて本格的な測定実験が行なわれた。 本研究装置の中心となる部分として、低周波数の縦防振装置(GAS)が挙げられる。これは、鉛直方向に支持する板バネを適切な形に変形させ、横方向から圧縮力を加える事で100mHz程度の低共振周波数を実現するものである。ただ、低共振周波数を実現するためには、この板バネの形状や材質、支持する荷重を微調整する必要がある。そこで、幾つかの試作品を製作・調整し、その特性を評価した。その中で最も性能の良いものを選び、本実験用の防振装置を設計し、製作した。 その後、それらの懸架装置で支持された鏡によって上下2段のファブリ・ペロー干渉計を構成し、制御系を組み込む事で動作させた。その結果、上段干渉計を制御することで、下段干渉計の変動が安定化される、という多段懸架干渉計(懸架点干渉計)の効果を実験的に確認する事ができた。さらに、音響や空気の揺らぎを抑えるために装置を真空中で動作させ、またレーザー光源に起因する雑音を除去するためにモードクリーナを組み込み、レーザー光源の周波数安定化を行なった。また、光源の強度安定化も行ない、下段干渉計をより安定にする研究まで進める事ができた。さらに、最終段階として、鏡の角度揺れを制御によって抑えるために、ウェーブフロントセンサーと呼ばれるシステムを組み込んだ動作実験も進められている。 この研究によって、将来の大型重力波検出器で採用される事になっている懸架点干渉計についての基礎技術が確立されたといえる。
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