研究概要 |
物質中で展開されるさまざまな物性の出現のメカニズムを調べるために,圧力や磁場などの外部摂動を加えた状態での電子状態の知見が得られる高磁場・高圧下の赤外分光の方法論を確立し,そこで得られた結果を理解するうえで基本となる電子状態を高分解能光電子分光装置で調べた。 高磁場下の顕微赤外分光では,擬二次元有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの超伝導・反強磁性絶縁体境界上ではどのような電子状態が実現しているのかを調べた。その結果,超伝導(金属)と絶縁体の相分離が数10μmの大きさのドメインを伴って出現していることがわかった。またこの相分離は,磁場の増加に伴って,金属相が安定化することを明確にした。 また,CeSbでは,高圧・高磁場・低温の多重極限環境下での赤外分光を成功し,高圧・低温下で現れる反強磁性相の電子状態を明確にした。さらに,圧力・磁場・温度相図を決定することに成功した。 高分解能角度分解光電子分光は,昨年度から今年度にかけて装置の建設を行い,世界最高レベルのエネルギー分解能が得られるようになった。その装置を分子科学研究所UVSORからの極端紫外光を使うビームラインに設置し,入射光のエネルギーを変えることによって,原子軌道を特定した高分解能角度分解光電子分光を開始した。現在研究が進行中である。 次年度(最終年度)は,κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Clなどの高圧下でおこる磁気転移などに伴う電子状態の変化を調べ,基底状態の統一的な描像を導き出したい。
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