1次元XXZ模型は代表的な可積分量子スピン系である。スピンの異方性変数Δに関して量子相転移を示す。変数qをΔ=(q+1/q)/2によって定義する。qが1のN乗根のとき、XXZ鎖はsl(2)ループ代数という無限次元リー代数と交換することが最近示された。転送行列とは独立な非可換演算子が多数存在し、非常に大きな縮退が出現する。 平成14年度の研究では、最初に、XXZ鎖のsl(2)ループ代数の縮退に対応するXYZ鎖の縮退固有状態を特徴付ける解析的理論を導いた。XYZ鎖の転送行列は8頂点模型のボルツマン重率で表されるが、これらの重率は楕円関数で記述されるために縮退状態の議論はむしろXYZ鎖の方が容易で見通しが良い。この理論からXYZ鎖の縮退次元の解析的公式が導かれ、そして縮退固有状態を構成する一般的方法が導かれた。 次に、Drinfeldによるsl(2)ループ代数の表示法を応用して、1次元XXZ鎖のsl(2)ループ代数の縮退を直接取り扱う解析的理論も研究した。sl(2)ループ代数の生成演算子の中のいくつかのものは、XXZ鎖の「正則な」ベーテ固有状態に作用するとこれを消滅することが、厳密に証明された。このDrinfeld表示を応用する理論の発展により、最終的には、sl(2)ループ代数による縮退の縮退次元を数学的に厳密に導くことが期待される。 解析的研究とは別に数値的研究も行った。ハミルトニアンを数値的に対角化することにより、sl(2)ループ代数から導かれるXXZ鎖の縮退の縮退次元と縮退エネギー固有値を数値的に求めた。まだ部分的ではあるが、解析的理論との比較の結果、解析的理論を裏付ける結果が導かれた。
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