研究概要 |
本研究は95GHzのミリ波帯を使う雲レーダと、可視および近赤外の波長を使用するライダという二つのアクティブセンサを用いて、氷雲、水雲およびエアロゾルを観測し、それらの物理特性を導出することを第一の目的にした。第2の目的として、それらの知見を利用して気候システムへの雲とエアロゾルの影響評価に役立てることを掲げている。 本年度は、レーダとライダを組み合わせることで全球の30%程度をカバーするといわれる巻雲の微物理特性を導出するアルゴリズムおよび観測データへの適用例をまとめ、論文化した(Okamoto et al.,2003,JGR)。 また、水雲の徴物理特性導出アルゴリズムも整備し、実際の観測船「みらい」に搭載した船舶型雲レーダとライダを使用して取得された中緯度での観測データを用いて、氷と水とで、落下速度と有効半径の関係式にどのような違いが現れるのかについてまとめた。この結果、氷粒子ではその非球形性が大きいため空気抵抗も大きくなり、結果として落下速度は、同じ質量を持つ水粒子に比べ、3分の1程度の大きさになっていることがわかった。これらの知見は現在の気候モデルには入っていないため、雲の寿命効果を調べる上で、このパラメタリゼーションの導入は非常に重要かつ急務であるといえる。水雲ナルゴリズムに関してと落下速度と有効半径の関係について、現在投稿準備中である。 エアロゾルについてもライダの2波長と可視の偏光解消度の情報を用い、エアロゾルのタイプ識別と共に、サイズと消散係数を各高度で求めるアルゴリズムを開発し、また、それを同じく観測船「みらい」のライダデータに適用し、エアロゾルの微物理量を導出することに成功した。エアロゾルアルゴリズムに関しても現在論文投稿準備中である。 また、船舶データと同期させて、NIES-CCSR開発の大気大循環モデルGCMをベースにしたエアロゾル輸送モデルを用いて、雲、エアロゾルの再現実験を行い、それらからレーダ反射因子、ライダ後方散乱係敷を再現した。この結果、気候モデルは低層雲を過大評価しすぎるという問題がわかった。また、ある程度エアロゾルの高度分布に関してはモデルの再環性は良いことがわかった。
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