海洋研究開発機構の観測船「みらい」に、95GHz帯(波長3.2mm)を用いる雲レーダと可視と赤外波長を用いるライダという2つのアクティブセンサを搭載し、海上での同時観測を実施した。これら観測による雲とエアロゾルの物理特性を複数のアルゴリズムの適用により抽出する観測データと気候モデルとの比較を通して、気候変動の最大の不確定性要素の一つである雲のパラメタリゼーションと、エアロゾルと雲との相互作用に関する知見を獲得することを目的としている。特に留意している点としては、観測とモデルの双方を密接に関係づけることである。現在までの成果としては、観測データベースをすでに構築し、関連する各研究機関に配付を開始した。レーダとライダの同時観測データから、雲レーダ、ライダのそれぞれの統計解析から、それぞれの測器の観測適用範囲を確立した。これらと、気候モデルとの比較を進め、中緯度では、高度3km以下では、気候モデルが、雲の出現頻度を過小評価すること、高度3-8kmの中層の雲は比較的良く再現されていること、高度8km以上ではモデルが過大評価していること、等がわかった。熱帯でも同様の比較を実施し、中緯度で見られたモデルの過大評価の傾向がさらに強調されることが判明した。これらは、雲の落下速度のパラメタリゼーションに過小評価という問題があるため、雲の寿命が大きくなり、それが雲の出現頻度の過大評価に現れているのではないかと推測している。雲の下層になるほど有効半径が大きいこと、落下速度も有効半径と線形な関係があることなどが観測データから導けた。この他、レーダとライダの同時観測可能な領域は少ないことから、レーダ単独の氷粒子微物理抽出アルゴリズムの必要性があり、これに着手し、落下速度と偏光解消度(Linear Depolarization Ratio LDR)の組み合わせが有効であること等を示した。
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