半導体・金属反応を利用したナノ構造の自己形成

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14702019
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 河野 日出夫 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00273574)
• キーワード: シリコン / ナノ構造 / 自己形成 / 金属触媒 / ナノチェーン / ナノニードル

研究概要

本研究課題では、金属触媒を利用した自己形成シリコンナノ構造であるシリコンナノ結晶チェーンとシリコンナノニードルの生成と物性について研究を行いまた継続中である。これらナノ構造は原料を封入した石英ガラスアンプルを1200℃程度で加熱し、冷却することによって得られるが,これまで加熱中あるいは冷却中いずれのときに生成しているかは不明であった。そこで様々な冷却条件下での生成を調べた結果,これらの自己形成ナノ構造は加熱中ではなく冷却中に成長していることが初めて明らかにとなった。この結果は、冷却スケジュールの選択により生成物の形態を制御できる可能性を示すものである。電子ビームエバポレータ-による原料供給と合わせて、生成時の温度を精密に制御することにより、生成物の形態の制御、さらには新しいナノ構造の創成を目指して実験を継続中である。
物性測定に関しては、シリコンナノ結晶チェーンのフォトルミネッセンスと電気伝導特性の測定に成功した。アルゴンイオンレーザー(514.5nm)の励起により、as-grownの試料では約570nmの、また酸化した試料においても570-580nmの発光を得た。酸化した試料でも同じ発光が見られることから、この発光はシリコンナノ結晶チェーンを形成するシリカ中の発光であると考えられる。電気伝導特性測定においては、非線形の階段状のI-V特性を観測した。シリコンナノ結晶チェーンはシリコンナノ結晶と絶縁体であるシリカが周期的に並んでおり、すなわち微小接合が直列に並んでいるとみなすことができる。従って、得られた非線形の特性は、直列の微小トンネル接合に起因するクーロン階段ではないかと考えている。また、走査トンネル顕微鏡によるシリコンナノ結晶チェーンの観察にも初めて成功した。

研究成果

• [文献書誌] H.Kohno 他: "Growth, structure and properties of chains of crystalline -Si nanosphers"Materials Science and Engineering B. 96. 76-79 (2002)
• [文献書誌] Y.Chen 他: "Ab-initio calculation of Si-K and Si-L ELNES edges in an extended defect model of crystalline silicon"Materials Transactions. 43. 1430-1434 (2002)
• [文献書誌] J.Yamasaki 他: "Novel amorphization process in silicon induced by electron irradiation"Journal of Nano-Crystalline Solids. 299. 793-797 (2002)
• [文献書誌] H.Kohno 他: "One phonon Raman scattering studies of chains of crystalline -Si nanospheres"Journal of Applied Physics. 91. 3232-3235 (2002)
• [文献書誌] H.Kohno 他: "Silicon nanoneedles grown by a simple thermal treatment using metal -sulfur catalysts"Japanese Journal of Applied Physics Part1. 41. 577-578 (2002)
• [文献書誌] 竹田精治 他: "ナノサイズのシリコン球体チェーンの作成技術"工業材料. 50. 53-56 (2002)
• [文献書誌] 河野日出夫 他: "シリコンナノ結晶チェーンの高効率生産技術"化学装置. 44. 62-64 (2002)
• [文献書誌] 河野日出夫(分担執筆)他: "電子顕微鏡法の実践と写真集"日本鉄鋼教会, 日本金属学会. 254 (2002)
• [文献書誌] 竹田精治 他(分担執筆): "ナノ粒子の製造・評価・応用・機器の最新技術"シーエムシー出版. 272 (2002)