本研究の目的は、一分子のDNAのゲノム情報としてGC含有量の1次元分布を光の回折限界を超えた分解能で得る光計測法を開発し、一分子DNAのゲノム情報解析法を確立することである。本年度は、以下の内容について実験および解析を行った。 光トラップ近接場光学顕微鏡システムの試作:Nd:YAGレーザー(波長1064nm)からの光を2つに分けて倒立型顕微鏡に入射し、一端に粒子を付けたDNA (DNA-粒子)をトラップする光(トラップ光1)と金粒子をトラップする光(トラップ光2)を別々の位置に集光させ、トラップした金粒子には蛍光励起用レーザー(2ωNd:YAGレーザー、波長532nm)の光を集光して照射し、蛍光を分光して観測した。 エバネッセント顕微鏡モードでのGC含有量計測実験:上記の基本システムを用いて照明光を全反射条件で入射(エバネッセント顕微鏡モード、分解能300nm)し、伸張した状態で基盤に吸着・固定したDNA分子をGC特異的に蛍光染色して一分子DNAの観察実験を行った。試料DNAとしてλDNAを用い、GC選択的吸着蛍光分子(D-アミノアクチノミオシンD、λ_<EXmax>=532nm)を用いた。伸張したDNAで蛍光強度パターンが計測され、配列情報から予測されるパターンとよく一致した。 ヒト21番染色体上のGC含有率分布の推定と解析シミュレーション:ヒト21番染色体を例題としてGC含有率分布の推定を行った。その結果、GC含有率は最大0.8から最小0.2までの値で激しく変化することを確認した。また、1000種類のテストフラグメントを生成し、GC含有率分布を計算で求め、それを全長DNAのGC含有率分布上でスライドさせながら比較してフラグメント位置を推定するシミュレーションを行った。その結果、閾値0.9以上にした場合、99.8%のフラグメントで元の位置を正しく一意に推定できることを確認した。
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