研究概要 |
近年,ナノテクノロジーやマイクロマシンに関連した,MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)およびμ-TAS (μ-Total Analysis System)における流れが注目されるようになり,超微細スケール流れへの感心が高まっている.たとえば,超微細流路では,静電気力,表面張力,壁面との濡れや分子間引力の効果が顕著になってくるが,従来のNavier-Stokes方程式に基づく流体力学ではこれらを正しく記述することができない.微小スケール流動では未知の現象と未解決の問題が数多く残され、これが新技術創生や生産効率向上の大きな障壁となっている.我国の技術立国としての回生には,ナノ・マイクロスケール境界領域における技術的難問題を克服するための新しい流体工学理論の枠組みが必要である. 本年度は,基礎理論の確立と次年度に行われる具体的な実験・解析の準備に注力した.ナノ・マイクロ流体工学理論体系の基本となる分子動力学シミュレーションコードを構築し,DNAや高分子への適用性を検討した.共同研究先のナノテク関連デバイス製造工場に出向き,複数の技術者と対話し,従来の考えでは理解できない点や,理論と比較し得る超微細流体現象についての情報収集にも努めた.また,報告者が共同組織委員長である米国機械学会主催のInternational Symposium on Computational Technologies for Fluid/Thermal/Chemical Systems with Industrial Applicationsに参加.し,米国における先端研究に関する情報収集を行った.さらに,血液の溶血現象(赤血球膜の破壊)に焦点をあてた人工心臓開発,および,μ-TASのナノ・マイクロ流体工学的アプローチに関する研究論文を専門学会に発表した.
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