マイクロマシン技術を用いて、医療、化学分析、動力源など物質や熱の移動が支配的なシステムの高度化・小型化・機能化を図るべく、マイクロスケールでの気液二相系の熱流体現象を独自に考案した気泡駆動型マイクロヒートパイプを実際に試作しながら探求している。 本年度はまず、マイクロ流体システムの大きな壁となっている流動抵抗を低減することを目指し、超微細な凹凸による撥水性の増加について研究した。具体的には、MEMSの製造工程に適合した表面修飾方法として、陽極化成法によるポーラスシリコン形成とその面の撥水性の関係を調べた。陽極化成法は条件次第でナノメートルからマイクロメートルまでの異なるサイズの孔を形成することができるが、SEMの観察と平行して静止液滴法により調べたところ、ナノポーラス面が孔の数密度の低さゆえに撥水性はほとんど向上しない一方で、マイクロポーラス面では陽極化成後に酸化とフッ酸処理を行うことで接触角150度を越えるまでの超撥水面を形成することに成功した。 また、潜熱と顕熱の同時輸送を目指した気泡駆動型マイクロヒートパイプ開発では、テーパーのついた流路形状が引き起こす気泡両端の表面張力差を原理としているため、形状をいくつか試作してポンプ能力の比較を行った。結果としては、流路が集合する形状では気泡が停滞して性能が著しく低いことや、気泡の膨張は加熱機構に依存するため、それに適した非一様断面の流路設計が必要であることがわかった。最狭部で発泡を引き起こすトリガーとしてのマイクロヒーター開発としては、新たに導入したスパッタ装置とプラズマCVD装置を用いることで、各種金属薄膜・ITO薄膜の品質の向上が確認できた。引き続き、世界最高性能のMEMS熱交換器を作り上げることを目指していく予定である。
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