研究概要 |
次世代Lab-on-a-chipやMicro-TAS上に新たな機能を創製するために,マイクロチャネル内における流体(液体,特に緩衝液)中に存在する分子や分子クラスターを,ナノスケール粒子を用いて選択的拡散輸送を実現するシステム構築に向けて,今年度は基礎的な実験的研究を行った.マイクロチャネルにおける流体の非定常現象解明のための局所空間粒子平均法(SAT-PTV),時系列二次元温度計測手法,そして電気浸透流三次元速度計測手法の確立を行った.更にマイクロチャネル内における数種類の緩衝液による反応界面における熱流動現象解明のための光学的システムの構築を行った.反応界面における熱流体の速度及び温度計測のために,本研究ではかご化染料(Dextran, DMNB-caged fluorescein,10,000MW, anionic)を用いた.かごを取り外すのに紫外光を,そして蛍光発光させるのに励起光を必要とするため,2種類のレーザ光源を装着した光学計測装置を開発した.この装置により,純水と油(オレイン酸)を用いた実験を行い,界面での現象解明を行った.更に,二流体の混合促進に関する実験的研究を行った.従来は,マイクロチャネル壁面にMEMSにより微細加工を施し,流動現象を制御し,混合促進を試みていたが,これでは一つの微細加工に対して一つの機能しか実現できない.そこで本研究では,マイクロチャネルにおける流動構造に着目し,流体に外力,具体的には交番電界を印加することにより,混合促進を試みた.交番電界の電界強度を増加するに従い,液液界面長さが増加したが,これは静圧駆動流と発生した電気浸透流との間に速度差が生じることにより,下流域での界面が増加することが明らかとなった.
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