研究概要 |
分析化学分野における最先端のマイクロTASの性能を飛躍的に向上させ,新たな機能を創製するためには,マイクロチャネル内の流体(液体,特に緩衝液)中に存在する分子及び分子クラスターを,選択的にコントロール可能とする技術が必要不可欠である.今年度は,現在まで不可能とされてきた物理量のセンシング,および選択的コントロール技術の開発研究を行った.マイクロチャネルにおいては,壁面近傍に形成される電気二重層が,熱流動現象を支配する.電気二重層の形成および過渡特性を定量的に評価するには,壁面ゼータ電位を時系列で計測する必要がある.そこで本研究では,マイクロ粒子画像流速計(マイクロPIV)を用いて,壁面ゼータ電位の時系列計測を行った.密閉セルを用いることによるサブミクロン粒子電気泳動移動度計測,マイクロチャネル内電気浸透流三次元速度計測,そしてゼータ電位時系列計測を可能とするシステム構築を行った.緩衝液中に存在するナノスケール粒子を選択的に分離可能とする制御技術の開発も行った.緩衝液の導電率比をコントロールすることにより,マイクロチャネル内に導電率勾配を発生させ,電気浸透流および粒子の電気泳動を電界を用いて制御することにより,サブミクロン粒子をマイクロチャネル下流域において,所望の場所で分離を可能とした.本年度の結果により,マイクロスケール熱流動センシング,マイクロスケール熱流動現象解明,そしてマイクロスケール熱流動コントロールが可能となり,マイクロチャネルにおける選択的分子拡散輸送システム構築の基盤がほぼ完成したと云える。
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