(1)強磁性体-半導体のオーミック接合ならびにトンネル接合を用いたスピン注入実験を行った。 強磁性体/InAsオーミック接合において強磁性体からのスピン注入が可能であることを、磁場印加時のエレクトロルミネッセンス(EL)の円偏光度測定から明らかにした。Fe薄膜をline and spaceパターン状に微細加工し、磁場を薄膜面に垂直方向に引加し、薄膜面に垂直な方向のELの偏光度の測定を行ったところ、スピン注入を示す円偏光度が得られた。 また、強磁性体/AlAs/GaAsのトンネル接合を用いたスピン注入実験では、薄膜面内に磁場を印加し劈開面からのELの偏光度測定を行ったところ、磁性体薄膜の磁化曲線と同様の円偏光の履歴特性が得られた。強磁性体薄膜を非磁性体であるAlにした試料による測定では円偏光が見られなかったことを確認した。 (2)局所的スピン注入実験を行うための実験系の準備を行った。 Fe薄膜試料作製の再現性の向上とW探針による表面電子状態の測定を行った。さらに、強磁性体のバルク探針を用いたスピン注入実験を行うための準備実験として、Fe薄膜表面の磁性体バルク探針によるSTM測定を行った。また、新しい試料としてマグネタイト薄膜の作製準備を行った。酸素雰囲気中でFeを蒸着することにより、マグネタイト薄膜が作製できることを確認し、その表面構造をSTMで測定した。 さらに、低温でのスピン注入実験ができるように低温STM装置を現在使用している実験系に付加し立ち上げを行った。
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