研究概要 |
熱磁気記録可能な磁気ランダムアクセスメモリを開発するためには微細加工した交換結合二層膜の磁区構造と磁化過程を十分理解する必要があり,本年度は微小交換結合二層膜の作製とその磁区構造について検討を行った.Si基板上にNiFe, CoFe, CoFeB軟磁性単層膜およびNiFe/MnIr, CoFeB/MnIr交換結合二層膜をマグネトロンスパッタ法により成膜した.微細加工前の磁気特性を交番磁界勾配型磁力計(AGM)により測定し,単層膜は異方性磁界5Oe程度の一軸異方性を持った良好な軟磁性膜が作製できた.また,交換結合膜についても一方向異方性エネルギー0.1erg/cm^2程度の十分な異方性が得られた.この膜を集束イオンビーム法を用いて正方形,長方形,円,楕円に微細加工した.加工寸法は磁気力顕微鏡において観測が容易な400nm〜5μmの範囲で作製した.原子間力顕微鏡により観察した加工形状はシャープな端面を持った良好なものであった.磁気力顕微鏡により観察した磁区像はNiFe単層膜とNiFe/MnIr交換結合膜で大きく異なった.これは交換異方性のためであることを有限要素法による計算で確認した.NiFe/MnIr素子の形状依存性について検討した結果,長方形素子では端面での静磁エネルギーを減少させるためにS磁区構造をとることが,楕円形素子では単磁区構造をとることが分かった.これは交換異方性の大きな二層膜においても素子形状により磁区形状を制御できることを意味し,素子に人為的に欠陥を入れた場合の磁区形状も検討する必要があることが分かった.今後,磁化過程の測定を可変温度下で行い,系統的な実験データを得る必要がある.
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