本研究は超小型集積化フェーズドアレーアンテナによる高指向性送信、金属基板マイクロ波デバイス・バランスドCMOSプッシュプルによる高効率低歪増幅器、高特性インピーダンスパッケージ・ボード技術をそれぞれ開発・融合することにより、電力消費をトータルで1/10以下に抑え、PDA(マルチメディア携帯端末)をいかなる状況で用いても電池寿命が最低1週間以上持続するための基礎技術を作り上げることを目的としている。 まず、超小型集積化高効率高帯域アンテナ実現のために必要な誘電体材料の検討を詳細に行った結果、アンテナ共振器を構成するBSTなどの高誘電率誘電体を、磁性を有する磁性誘電体とすることで、さらに小型・高効率のアンテナが構成できることを見出し、携帯電話用小型・高効率・広帯域アンテナの設計指針を確立した。 さらに磁性誘電体に用いる誘電体材料であるBSTなどの高誘電率薄膜を安価に高速に形成するために、きわめて高い圧縮比を有し、チャンバ内に不純物が逆拡散することの一切無い不等ピッチ不等傾斜角排気ポンプを搭載したマイクロ波励起高密度プラズマCVD装置を作成した。本装置により導入するプラズマ励起ガス・プロセスガスを選択することでプロセスガスの過剰解離抑制とプラズマイオン照射ダメージ抑制を両立させた高品質CVD成膜が可能となり、携帯端末用低損失アンテナ製造技術の基礎を確立した。 さらにシクロオレフィン低誘電率プラスチック基板(比誘電率2.5)の表裏面に無電界めっき法により基板表面を荒らすことなく、密着性の高い極めて平坦な10μm幅以下の銅配線を形性する技術を確立し、高速信号伝播が可能なプリント配線基板の技術を確立した。
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