研究概要 |
水田主体の農業流域を対象に、汚濁負荷流出の影響因としてのイベント時の水管理や土壌の種類を考慮した分布型負荷算定モデルの構築を試みた。モデルは、圃場への用水流入量を入力とし圃場内の水収支計算の結果から圃場からの排水量を算定する水収支モデルと、水収支に伴う物質移動の他、各種物質循環や形態変化を考慮した上で圃場からの流出負荷量を算定する物質収支モデル,各圃場への用水配水量と用水水質を計算する用排水ネットワークモデルの3つのモデルから成り立つ。水収支モデルでは,浸透量を土壌種類ごとの透水係数をもとに表層地質の分布から与えるなど、モデルのパラメータに物理的数値を用いることで流出構造のブラックボックス化を防ぎ、土地条件が変化した場合に対応できるようにした.物質収支モデルでは,稲による栄養塩の吸収、吸脱着,有機化、無機化、さらに硝化、脱窒などの形態変化も考慮に入れた.用排水ネットワークモデルは、頭首工での取水量、分水工での分水比、落水工での落水量などから用水路流下中に周辺圃場に配水される量を求め、面積比配分で各圃場への給水量を与えることができる。頭水工などの各種機能や水路、圃場の位相情報と接続関係を効率的に参照するためにGISを利用した。また水管理の違いについては,農業暦を参考に一定の期間にランダムに農作業が行われると仮定して計算を行った. 以上のモデルを滋賀県野洲川流域において適用した。末端水路の排水が流入する河川の実測流量と傾向の比較をおこなった結果、比較的高い相関関係が得られた。流量については,年間を通して流量と流出負荷量の算定が可能なモデルを構築できた。今後の課題としては、負荷算定精度向上を目指してのモデルの見直し、特に栄養塩の吸脱着するSSの挙動に着目する必要があると考えられる。またパラメータが未知の場合の推定方法,地理情報の利用方法の整理についても検討する必要がある。
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