分解組立性設計を導入した骨材回収型リサイクル指向コンクリートの実証化研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14702046
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 田村 雅紀 東京都立大学, 工学研究科, 助手 (80315754)
• キーワード: 改質処理方法 / 改質処理骨材 / 骨材回収型リサイクル指向コンクリート / 力学特性 / 骨材回収性 / 表面剥離性状 / セメント系微粉末 / 耐久性状

研究概要

平成14年度に予定された計画に基づき、次の(1)(2)を主に検討した。以下に研究概要を示す。
(1)分離採取しやすい骨材の再生後の基礎物性調査と製造方法の確立
分離しやすい骨材は、2種類の骨材界面改質処理方法により製造した。物理処理方法は、骨材表面の微細界面の凹凸を処理材により平滑化して、機械的なかみ合わせを低減する方法であり、化学処理方法は、遷移帯近傍の水和反応を抑制して、骨材界面のセメントマトリックスとの付着力を低減する方法である。双方の改質処理方法を用いて、国内で現在汎用され、かつ将来においても使用可能性が高いと考えられる骨材について、物理的性質(表面粗さ、表面深度、空隙径)を詳細に評価した[現有設備]。またその骨材を使用して、普通強度から超高強度までのコンクリートを製造し、セメントマトリックスの強度レベルが、表面剥離性状や原骨材回収性に及ぼす影響を実験的に評価し[現有設備]、骨材回収性を高めつつ、かつ構造用コンクリートとして使用が可能になる条件を導き出した。また原骨材以外の微粉末を製造し、新規に導入した蛍光X線装置[新規設備]を使用して、骨材回収の際に発生するセメント系微粉末に含有される骨材成分の割合を分析することで、骨材回収型リサイクル指向コンクリートによる、セメント製造時における脱炭酸化が不要となる水酸化カルシウムの脱水によるセメント原料製造システムの実行可能性を検討する段階に至ることができた。
(2)分離採取しやすい骨材を用いたコンクリートの耐久性調査
骨材回収型リサイクル指向コンクリートにおいて、強度レベルが相違する硬化コンクリートについて、凍結融解抵抗性、中性化抵抗性を実施し、コーティング骨材がコンクリートの耐久性能に及ぼす影響を調査した。結果、凍結融解試験[他機関設備]に関しては、普通強度と位置づけられるコンクリートの場合、物理処理および化学処理による改質処理骨材を使用すると比較的早期に質量減少率が拡大することが確認されたが、高強度に位置づけられるコンクリートの場合、骨材改質処理の有無に関わらず、300サイクル試験の時点でも質量減少はほぼ発生しておらず、耐久性に与える影響はほぼ解消されることが実験的に確かめられた。中性化抵抗性試験[現有設備]に関しては、骨材の改質処理は強度レベルに因らず影響しないことが実験的に確かめられた。

研究成果

• [文献書誌] 田村雅紀, 野口貴文: "完全リサイクルを実証するコンクリートデザイン(その1 順工程生産システムによる資源循環の形態)"セメント技術大会講演集. 第56回. 364-365 (2002)
• [文献書誌] 田村雅紀, 野口貴文: "完全リサイクルを実証するコンクリートデザイン(その2 ライフサイクル設計に包含されるリサイクル設計手法)"セメント技術大会講演集. 第56回. 366-367 (2002)
• [文献書誌] 田村雅紀, 野口貴文, 橘高義典: "骨材回収型コンクリートの基礎的物性"コンクリート工学年次論文報告集. Vol.24No.1. 1353-1358 (2002)
• [文献書誌] 田村雅紀, 野口貴文: "建築構造物のライフサイクル設計に包含されるコンクリートの材料設計手法(その1 既存システムからの順逆工程統合生産システムへの展開)"日本建築学会大会学術講演梗概集. A-1. 893-894 (2002)
• [文献書誌] 野口貴文, 田村雅紀: "建築構造物のライフサイクル設計に包含されるコンクリートの材料設計手法(その2 ライフサイクル設計の基盤となるリサイクル設計)"日本建築学会大会学術講演梗概集. A-1. 895-896 (2002)
• [文献書誌] Masaki Tamura, Takafumi Noguchi, Fuminori Tomosawa: "Life Cycle Design based on Complete Recycling of Concrete"The First fib Congress 2002 Concrete Structures in the 21st Century. (CD-ROM). (2002)