本年度は、メタ磁惟転移が明瞭に現われるLa(Fe_xSi_<1-x>)_<13>化合物を対象とし、昨年度の成果を考慮して以下の実験考察を行った。 1.巨大磁気熱量効果の直接測定 昨年度、本化合物において磁気熱量効果の重要な指標である断熱温度変化が顕著であることが間接測定より明らかになった。しかし、得られた値は、理想値であり、磁気系の熱変化が格子系を通じて実際に外部環境に伝達された分のみが冷凍に寄与する。そこで、昨年購入した再凝縮デゥワー中に、断熱カプセルを作成し、磁場変化による試料の温度変化直接測定した。その結果、キュリー温度近傍において、永久磁石で対応可能なO-2Tの磁場変化により約4〜5K程度の温度変化が実際に観測された。この値は、間接測定より算出した理想地に近い値であり、従って、本化合物のメタ磁性転移に伴う磁気系の熱量変化を、ほぼ全て冷凍に応用できることが確認された。 2.磁気冷凍特性の低温側への拡張 これまで、本化合物への水素吸収により、巨大磁気熱量効果を室温で得る事に成功しているが、磁気冷凍は、室温での応用に加え、高温酸化物超伝導体を用いたデバイスの長時間冷凍等への応用が期待される。そこで、より低温側での動作が可能な材料を得るため、本化合物の元素置換によるキュリー温度制御を試みた。その結果、FeをMnにまたLaを他の希土類元素で置換する事により、1次相転移による巨大磁気熱量効果を保ち、キュリー温度を100K近傍まで低下制御できることが明らかになった。
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