マイクロマシン用制振性構造材料等への応用を目指して、逆位相境界をテンプレートとして転位組織を制御したTi_3Al単結晶を作製する研究を行った.本年度は、転位組織形成に及ぼす逆位相領域(APD:逆位相境界で取り囲まれた領域)のサイズと塑性変形量との関係を明らかにするとともに、転位と逆位相境界との相互作用について考察し、高制振性発現の可能性を検討した。具体的な成果は以下のとおり。 光学式浮遊帯域溶融法(申請備品)により作製したTi_3Al単結晶に、サイズ250nmのAPDを導入し、{11^^-00}<112^^-0>柱面すべり系が活動する加重軸で、1〜50%の塑性ひずみを圧縮あるいは引張試験により与えた。5%以下の塑性ひずみを与えた結晶内部には、一部分が逆位相領域境界(APDB)に沿って屈曲した転位が親察され、その屈曲部の割合は塑性ひずみ量とともに上昇した。このことより、APDBが転位配列のテンプレートとしての機能を果たすことが認められた。また、各転位は超格子部分転位として存在していたことから、Ni_3Al中での発現が報告されいるようなAPDB上での超格子転位対の崩壊は生じておらず、超格子部分転位はAPDBに隣接して存在していることが示唆された。このことは、APDBに沿って存在する転位がAPDBに完全には拘束されておらず、比較的小さな交番応力の付加により往復運動できることを意味しており、完全に可逆的な微小塑性ひずみの発現の可能性を支持している。50%の塑性ひずみを与えたところ、APD内部にも転位の堆積が観察され転位密度は大幅に上昇した。その際、転位同士の反応による転位ネットワークやセル壁の形成など、転位の不動化を暗示する組織は観察されなかったころから、1〜50%もの広い塑性ひずみ範囲で、可動転位密度の上昇のみを伴う転位の導入が可能であり、強度とのバランスを保ちつつ、交番変形能や制振性を向上させられることが示された。
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