研究概要 |
「超微細酸化物粒子のカーボン被覆技術」の確立を目指し、メタンガス(CH_4)を使用したカーボン被膜の生成および還元実験を行い、以下の知見を得た。 (1)メタンは1473K以上では1秒程度でほぼ全量が炭素と水素に分解するが、1373Kでは40〜50%程度の分解率であった。速度解析の結果、256kJ/molという活性化エネルギーを得た。 (2)1423K以下の温度では、メタン還元より水素還元の還元速度が速いが、1423K以上ではこの関係が逆転する。1573Kにおいて、メタン還元の還元速度は水素還元の約2.8倍、一酸化炭素還元の約7倍であった。 (3)鉄板を用いた予備実験において、メタンの分解により生成したカーボンは即座に鉄中へ浸炭することが分かった。メタンの分解により生じた炭素の鉄中への拡散係数を算出したところ、一酸化炭素ガスを用いて浸炭実験を行った際の報告値と同程度であった。 (4)還元された鉱石の金属鉄層内に炭素が浸炭しており、メタンの分解・炭素拡散・浸炭した炭素と酸化鉄との反応が律速段階である。解析の結果およびEPMAによる炭素濃度の測定結果から、炭素の拡散は非常に速く、金属鉄層は溶融層を形成していた。浸炭した炭素と酸化鉄との反応を律速段階と考えた場合、水素還元の活性化エネルギーの約5倍である193kJ/molという値を得た。 (5)生成鉄殻中の気孔率が低くなると、水素還元ではガス拡散の影響が大きくなるが、メタン還元ではリフォーミングによりガス拡散の影響を低減できる。 (6)酸化物粒子の粒径を32-45,45-54,63-74μmと変えて実験を行った結果、63-74μmの粒径の粒子を用いた際に還元速度が最大となった。
|