研究概要 |
栃木県の喜連川丘陵の上に堆積する風成塵堆積物を小川町芳井の露頭より採取した.まず,風成塵堆積物中に含まれる,年代既知のテフラの年代とOSL年代を比較するため,テフラ直下より採取した8試料のOSL年代測定を行った.試料は、沈降法により粒径4-11ミクロンの粒子をとりだし,珪フッ化水素酸で処理して微細石英のみを取り出した.微細石英試料のOSLに含まれる成分を調べるため,まずLM-OSL(linear modulated OSL)測定を行った.この結果,中国レスに含まれるfast成分のほかに,medium成分,slow成分が認められた.また,試料を加熱後に再度LM-OSLを測定すると,いちどブリーチされたmedium成分が回復することが明らかになった.そこで,OSL年代測定の際にはfast成分のみの信号強度を使って年代測定をする必要がある.OSLの発光曲線をフィッティングにより3つの成分に分離したのち,SAR法により等価線量を求め,試料のOSL年代を求めたところ,鈴木ほか(1998)により求められた,テフラのFT年代と一致する年代が得られた. さらに,OSLめ回復がみられたmedium成分の起源を調べるため,テフラに含まれる石英をガンマ線照射後,LM-OSL測定を行った.すると,テフラ中の石英にはfast成分はほとんど含まれず,medium成分と,slow1成分が卓越し,これらの成分のいずれもが,強いOSLの回復を起こすことが明らかになった.したがって,日本の堆積物のOSL年代測定を行う場合,テフラ起源の石英が含まれると,OSLの回復の影響をうけて年代を過小評価する危険性のあることがわかった.
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