研究概要 |
新潟県津南町の谷上段丘上に堆積した風成塵堆積物を約50センチおきに連続的に採取し,粒径4-11ミクロンの微細石英を抽出した.日本の風成塵堆積物(いわゆるローム層)は主として中国大陸起源のレスと小規模噴火による火山灰の混合物であると考えられるが,これに含まれる微細石英のOSLを測定すると,中国大陸起源石英に特徴的なfast成分と火山起源の石英のみにみられるmedium-slow成分の両方が認められる.昨年度の研究で明らかになったように,OSL年代測定をおこなう際は,OSLカーブからfast成分の信号強度のみをフィッティングにより取り出す必要がある.このようにしてfast成分のみを用いてOSL年代測定を行った上で,各試料について,fast成分の信号強度がOSL全体に占める割合を計算した.すると,fast成分の割合は酸素同位体ステージ(OIS)8,6,4の後半から4にかけて大きく,ステージ7および5の前半に小さいことがわかった.このことから,fast成分の割合が高い時期には北西モンスーンが強く,大陸からの風成塵が多く飛来していていたことが推測される. また,日本海北部の2本の堆積物コア,KT94-15-PC-5 (40N,138E,2885m)およびKT94-15-PC-9 (39N,139E,807m)についても微細石英に含まれるOSLの成分が時代とともにどのように変化しているかを調べた.これらの堆積物には,大陸起源の風成塵のほかに,本州からの河川起源の堆積物が含まれると考えられるため,日本の大規模な花崗岩・流紋岩体からも石英を抽出し,観測されるOSLの成分を比較した.この結果,花崗岩・流紋岩の石英は微弱なOSLしか発しないこと,fast成分とmedium成分の信号強度比から,時代による風成塵の起源の変化を推定できる可能性のあることがわかった.
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