定常運転核融合炉における周辺粒子制御への応用を目指し、超透過現象を利用したメンブレンポンプの開発が進められている。超透過は、透過膜入射側表面が酸素等の非金属不純物で覆われており、水素同位体の再結合放出が抑制されている場合に発現する。従って、スパッタリング環境下で透過性能を維持するためには、バルク中へ不純物を溶解し連続的に表面偏析させる必要がある。昨年度は超透過膜の候補材であるNbについて、表面偏析酸素と水素の相互作用に関する基礎データを取得した。本年度はバルク中の酸素濃度を大きく変化させ透過実験を行い、水素の表面再結合係数k_rと酸素の表面偏析挙動との関係を記述するモデルを提案した。 まず、昨年度購入した設備備品を用いて作成した超高真空超透過実験装置内にNb膜(厚さ0.1mm)を取り付け、高温において水素プラズマでスパッタし内部の不純物を除去した。酸素をバルク中に0.03〜1.5at%まで吸収させたのち、H_2の透過実験を行い、k_rのバルク酸素濃度依存性を調べた。また、表面酸素濃度をオージェ電子分光法(AES)により測定した。 バルク濃度C_<OX>の増大に伴い再結合係数k_rは急激に減少した。しかし、活性化エネルギーにはほとんど変化は見られず、k_rの減少は主に頻度因子項の減少によるものであった。このことから、水素の再結合放出速度の減少は、酸素によるサイトブロッキング効果で説明できると結論した。一方、AESによる表面分析の結果、表面酸素濃度の変化はGibbsの吸着式から導かれる単純な表面偏析モデルでは説明できず、比較的低温の領域(1000K以下)における飽和表面酸素濃度がC_<OX>に伴い増大することがわかった。この飽和表面酸素濃度の増大とk_rの頻度因子項の減少との間には強い相関が見られ、それを記述するモデルを提案した。また、Nb表面の酸素のスパッタ速度を求める実験も行った。
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