医用画像診断装置の発達に伴い、画像誘導による経皮的脊椎穿刺手術が可能となり、最小限の侵襲で患部へ到達し治療を行う手術が可能となりつつある。経皮的穿刺治療では、針を患部へ誘導するための形態画像だけでなく、治療効果の生理学的情報の可視化が強く求められているため、今後は核磁気共鳴診断画像(Magnetic Resonance Image : MRI)を誘導画像として利用するニーズが高まる。また、穿刺手術という治療空間の限られた術式では、術者の人間としての手作業では実現できない手術操作が必要となる。研究最終年度は、MRI画像の画質に影響を与えず、MRI撮影装置内の強磁場環境でも動作する手術ロボットの開発を行い、これまで開発してきた手術中の臓器の位置のトラッキングと組み合わせた、臓器運動補償型手術ロボットを完成させた。 開発したロボットは、5自由度MRI誘導手術用ロボットであり、能動駆動を行う水平駆動3軸と、受動的に動作する軸2軸を持つ。受動動作する軸にはMRI誘導下肝腫瘍マイクロ波凝固治療用のガイド針保持軸を備え付けることができる。術者がガイド針を自由に動かすと、針の到達点をMRI内で指示した腫瘍に維持するように能動駆動軸が駆動する。 さらに、開発したロボットを研究初年度から2年度にかけて開発した、MRI誘導手術用ナビゲーションソフトウェア及び、臓器動作補償アルゴリズムと組み合わせて用いる事に成功した。すなわち、医師が予めナビゲーションソフトウェア内で指定した腫瘍に、ガイド針が必ず到達するように医師を補佐するロボットを完成した。加えて、ガイド針の位置決め作業中は臓器の移動をロボットが自動的に感知し、位置ずれ補償を行う機能も実現した。開発1号機について、MRI環境内での動作を確認し、4月以降の臨床に向けてテストを進めている。
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