研究概要 |
本研究では,38億年前のグリーンランドIsuaのAmitsoq片麻岩(gneiss),縞状鉄鉱層(BIF),35億前の西オーストラリアのいくつかのBIF,チャート(chert),34-28億年前のインドのBIFなど,38億年前から25億年前にわたる,世界各地のgneiss, BIF, chertのレニウム(Re),オスミウム(Os)同位体比を分析することによって,未だよくわかっていないArcheanの大陸地殻がいつ頃,どのように誕生し,その後どのように進化してきたかということに関して情報を得ることを目的とする。昨年度は分析環境の工夫などによってブランクを下げることに成功し(Osで2pg, Reで7pg),オーストラリアPilbaraの34.6億年のMarble Barのチャート7試料について分析を行った。本年度,その解析を行い,これらのチャートは34.5±8.8億年のRe-Osアイソクロンを形成し,その初生^<187>Os/^<188>Os同位体比は0.93という非常に高い値を示すことが明らかになった。ここで,初生^<187>Os/^<188>Os同位体比は,その岩石の生成時の同位体比を示す。この結果は,35億年前にすでに進化した大陸地殻が存在したことを示唆する。実際,44億年前に現在の大陸地殻の平均Re/Os比を持った物質が存在したとすれば,34.6億年前に^<187>Os/^<188>Os同位体比は0.93を示すことになる。一方,38億年前のIsuaのBIF,チャートについても分析を行った結果,同様に高い初生^<187>Os/^<188>Os同位体比を示すことが判明した。これも初期Archeanにすでに進化した大陸地殻が存在したことを示唆する。今回の結果は,地球初期にかなりの量の大陸地殻が普遍的に存在し,それが現在に至るまでに風化によって削られて,マントルにリサイクルしているというモデルを支持する。
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