電子線は物質との相互作用断面積が高く、物質の性質を調べ、また、物質の電子状態、振動状態との相互作用を通して、状態変化を引き起こすための有用なツールである。本研究は、電子線を利用した表面素反応過程を解明するために、電子線照射による陽イオン脱離をイメージングするための装置の開発を行っている。1ナノメートル四方の位置分解能の達成を目指して調整を行っている。実験対象の系としては、Pt(100)表面上の酸素-水素反応を予定している。反応の時空間パターンが観測されることが期待される。また、これと並行して、半導体の光照射により発生するhot electronの引き起こす光化学過程の研究を行うための準備を行っている。特に、色素増感太陽電池は、この点で、基礎的にも、実用的にも興味深い対象であり、電子の果たす表面過程への役割を解明する必要性が高い。チタニアへの色素分子の固定化、及び、チタニア表面を他の酸化物薄層で覆うための実験的準備と、理論計算の準備を行っている。 また、密度汎関数法の立場から、固定化触媒のRh活性点の構造、エネルギー計算を行った。Rhが亜リン酸トリメチルと相互作用する際の安定化エネルギーや配位子の離脱とRh-Rh結合の生成の関係などが明らかにされた。また、Cu(001)上のLiCl蒸着膜に関する構造計算も行った。また、H-ZSM-5中に生成するReクラスターと関連して、固体NMRの測定を行った。29Si-NMRと27Al-NMRによりゼオライト骨格とRe修飾との相関が得られた。これらの知見は今後の研究対象選択の上で参考となる。
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