本研究では、本研究では、超短パルスレーザー光を用いて、固体表面上の振動コヒーレンスを誘起し、その表面化学反応への影響を調べることを目的としている。本年度は以下に一挙げる成果を得た。 ・白金(111)表面に吸着したセシウム単原子層の振動コヒーレンスの観測 超高真空中に保持した白金単結晶清浄表面にセシウム原子を蒸着し、パルス幅約150フェムト秒のパルスレーザを用いて、セシウムー白金間核振動を誘起し、核変位の時間領域観測を行うことに成功した、これは、固体表面単原子層吸着種の振動コヒーレンスの直接観測としては、世界で初めての例である。 測定手法としては、上記フェムト秒パルスによる時間分解第2高調波測定を行い、固体表面での核変位を表面第二高調波の強度変調として観測した。 振動コヒーレンスによる信号の、セシウム被覆率依存性、温度依存性、励起光強度依存性を調べた結果、振動コヒーレンスは、セシウム由来の電子状態変化に伴う、共鳴インパルシプラマン散乱過程により誘起されると結論された。また、高強度励起下では、振動コヒーレンスの減衰速度が著しく増大するのが観測され、過渡的に高温になった白金基板中の電子による位相緩和過程の寄与が示唆された。さらに、観測された信号の振動数成分の解析から、セシウム-白金間振動だけでなく、白金基板の表面フォノンの核変位も観測できることがわかった。
|