研究概要 |
室温以上のマルテンサイト変態温度およびキュリー温度を有するNiMnGa合金を用いてエポキシとの複合材料を作成し,その機械的性質を調べるとともに,機械的性質に及ぼすNiMnGa粉末の体積率の影響について調べた.また,NiMnGaの効果を明らかにするために,2種の粉末を比較材として同様の複合材料を作製した.その一つは非磁性かつ形状記憶特性の異なるTiNiCuであり,もう一つは形状記憶効果と磁性を共に有さない銅粉末である.まず,NiMnGa合金については電子/原子比より予測されたように310K程度のマルテンサイト変態温度と350K程度のキュリー温度を示す合金を作成できることを確認した.その後,インゴットを機械的に破裂し,150μm程度の粉末にできた.同程度のマルテンサイト変態温度を有するTiNiCuは単ロール超急冷法により作成し,脆化熱処理後に機械的に破裂できた.銅粉末は市販のアトマイズ粉を利用した.体積率としては粉末の体積率として5%-80%の複合材料を作製したが,40%以上の場合は試験片が脆く,良好な機械的性質が得られなかった.粉末の体積率が5%,10%,20%のものを比較すると,10%の場合が最も延性と強度のバランスに優れた.銅粉末を用いた場合には他の粉末よりも延性が良く,機械的性質にはマトリックスと粉末の界面の問題が大きいことを示唆した.およびTiNiCuを用いた場合は最も強度が高く,形状記憶合金のマルテンサイトバリアント再配列応力が強度に関係することを示唆した.一方,NiMnGaのマルテンサイトバリアント再配列応力はエポキシの強度と比較的近く,相性が良いと考えられた.ひずみ-温度曲線からはエポキシの熱膨張が大きく,マルテンサイト変態ひずみが明確には測定できなかったが,変態温度近傍にてひずみが増加することを確認でき,本複合材料の設計の妥当性を検証できた.
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