研究概要 |
本研究では半導体及び金属の無機ナノ粒子、光機能分子の有機ナノ粒子、さらに無機ナノ粒子と有機ナノ粒子を組み合わせた有機・無機複合型ナノ粒子を組織化した薄膜を構成する。そして、これらの薄膜において、形成過程に"磁場"を印加してナノ粒子やナノ素子のナノ構造を制御する事で、"新規"光特性を有する光機能ナノ素子の創製を図る事を目的として研究を行った。 1.有機ナノ粒子の場合に関しては、以下の検討を行った。クラスター状態であるC_<60>誘導体のTHF:水混合溶媒をマイカ基板上に滴下して乾燥させる方法またはアセトニトリル:トルエン混合溶媒を透明電極基板上に直流電圧をかけ電解吸着させる方法で固定した。この滴下・乾燥や電解吸着過程に磁場を印加したサンプルと磁場を印加しないサンプルを作成して、AFMによって両者のナノ構造を比較した。磁場を印加しない場合は円状のナノ構造が観測されたのに対して、印加した場合は縦長の楕円状のナノ構造が部分的に観測された。これは磁場によってナノ構造が変化したと考えられる。 2.無機ナノ粒子の場合に関しては、希薄磁性半導体(Zn_<1-x>Mn_xS)のナノ粒子をAOT逆ミセル法によってW=[H_2O]/[AOT]を変化させながら作成した。ナノ粒子のAOT逆ミセル溶液、または、アルカンチオールでキャッピングしたナノ粒子の粉末を試料とした。AOT逆ミセル溶液の吸収スペクトルは、W値が減少するに伴ってZn_<1-x>Mn_xS粒子の吸収ピーク及び吸収端が短波長シフトした。これは量子サイズ効果が原因である。次に、発光スペクトルでは、W=4,5,7,10の場合では、590nm付近に発光ピークが観測されたのに対して、W=2.5の場合ではこの発光ピークは観測されなかった。この発光はZnSからZnSマトリックス中のMn^<2+>へエネルギー移動したMn^<2+>による発光に帰属される。調整方法を変えて、発光及びESRスペクトルによって検討すると、ZnSマトリックス中に孤立し、かつSと完全に配位したMn^<2+>が多いほど発光特性が良い事がわかった。
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