一般家電製品に含まれる金属配線基板の光リソグラフィ法による製造では、膜厚数10μmの有機画像形成材料が用いられている。製造過程で最終的に有機フォトレジスト材料は産業廃棄物となるため、環境面とコスト面でその低減化が望ましい。そこで、膜厚数nmの有機ナノ薄膜を用いて配線基板を作製できれば、廃棄物量を約10000分の1に低減できる。ここでは、基板表面に形成される単層状の高分子吸着膜の光パターンを利用したAdditive法による配線基板の新規作製法の開発を目的とした。 ポリ(1-アルキル-4-ビニルピリジニウム ブロミド)からなる正の吸着膜にNi無電解めっきを行った。その結果、吸着膜の側鎖アルキル基が長いほど、選択的金属化が良好に起こる現象を見出した。この現象は、酸化すず系触媒先駆体の吸着量の増加に由来することがICP-AESによるSnの定量からわかった。しかし、カチオン性吸着膜の正のゼータ電位は、アルキル基が長くなるほど、より小さくなることがわかった。この事実を考慮すると、静電相互作用による触媒粒子の吸着だけでなく、吸着膜と界面活性剤の長鎖アルキル基間で働くvan der Waals相互作用が吸着に大きく寄与していると結論できた。 Sn化合物を用いないで工程数を減らし、マイクロサイズの水平解像度で銅配線基板を作製するために、新規高分子吸着剤を開発した。この高分子吸着膜は、PdCl_2水溶液への浸漬により、配位結合を介して[PdCl_x]^<2-x>を吸着した。吸着されたPd^<2+>イオンは、ジ亜リン酸イオンにより還元され、数nmのPdナノ粒子を形成することがわかった。シリカ基板上の膜厚2nmのパターン化吸着膜に無電解Cuめっきを行うと、膜厚0.5μm、水平解像度10μmの銅配線を吸着膜上に形成できることがわかった。
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