π共役系剛直鎖ポリヘテロアセン類におけるナノ構造制御と量子秩序

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14703029
• 研究機関: 早稲田大学
• 研究代表者: 小柳津 研一 早稲田大学, 理工学総合研究センター, 講師 (90277822)
• キーワード: ヘテロアセン / π共役系 / 高次構造制御 / スルホニウム塩 / Swern反応 / 求電子置換反応 / 閉環反応 / 電荷移動錯体

研究概要

スルホニウムの親電子反応を擬二次元π共役系高分子の新合成法として確立すると共に、その光電子物性を明らかにすることを本研究の目的とする。
π共役系(3d-2p共鳴)が拡がった歪みのない平面構造は、従来知られている一次元π共役高分子に比較して高い電子伝導度、光伝導度、3次高調波発生、屈折率変化(非線形光学特性)などの機能発現が期待できる。初年度は、ポリアセン型のπ共役連鎖を用いて、微細相分離や液晶形成に基くナノ凝集体など、数分子を単位とする所定の集合構造を自在に誘導する方法を確立し、ナノメータレベルの構造制御により発現する電気・磁気的性質を分子素子や光学素子に応用することを目的とした。本年度の具体的成果を下記に述べる。
1.スルホニウム経由のポリヘテロアセン合成法の確立
スルフィニル置換基を有するフェノール、アニリン、チオフェン誘導体を合成、銅/アミン、Pd/リン、Zn/Li錯体触媒によりそれぞれ重合させ、厳密に構造規制されたスルフィニル重合体を得た。超強酸(トリフルオロメタンスルホン酸など)を用いるSwern反応(スルホニオ基求電子置換反応)により閉環させ、スルホニオ骨格を構築した。アミン類を用いた電荷移動(CT)錯体形成によりスルホニウムの電子密度を調節、構造欠陥のないポリヘテロアセンを合成した。本系をキノイドや孤立電子対を有するピリジン、ピラジンなどにも展開し、新規ポリアセン型スルホニウムの合成法として確立した。ポリスルホニオアセンは電解質であるため極性溶媒に可溶、紫外可視、NMR測定などから構造が正確に把握された。固体構造は粉末X線、XPS、SEMにより解析、従来のポリヘテロアセン類などとも比較し、詳細構造を明らかにした。
次いで、求核試薬を用いたスルホニウムの脱アルキル反応が可逆的に生起することを明らかにした。合成されたポリスルホニオアセンの脱アルキル反応により、チオエーテル型アセンの合成法を確立した。この方法をオリゴマーモデルにも適用し、非線形(NLO)クロモフォアとしてフェノチアジン骨格を単位構造に有するガラス状高分子を得ることができた。

研究成果

• [文献書誌] K.Oyaizu, T.Mikami, F.Mitsuhashi, E.Tsuchida: "Synthetic Routes to Polyheteroacenes : Characterization of a Heterocyclic Ladder Polymer Containing Phenoxathiin-type Building Blocks"Macromolecules. 35. 67-78 (2002)
• [文献書誌] K.Oyaizu, F.Mitsuhashi, E.Tsuchida: "Palladium-catalyzed Synthesis of Oligo(methylthio)aniline and Conversion to Polyacene-type Electrolytes Bearing Phenothiazinium Repeating Units"Macromol.Chem.Phys.. 203. 1328-1336 (2002)
• [文献書誌] B.Shentu.K.Oyaizu, H.Nishide: "Reduction of Oxygen at an Electrode Modified by Cobaltporphyrin Liquid Membrane"Chem.Lett.. 712-713 (2002)
• [文献書誌] K.Oyaizu, H.Nakano, B.Shentu, H.Nishide: "Electroreduction of Oxygen Enriched in a (Polyethyleneiminato)cobalt(II) Layer"J.Mater.Chem.. 12. 3162-3166 (2002)
• [文献書誌] E.L.Dewi, K.Oyaizu, E.Tsuchida: "Four-Electron Reduction of Dioxygen Catalyzed by a Decavanadium Complex"Inorg.Chim.Acta. 342. 316-318 (2003)
• [文献書誌] E.L.Dewi, H.Nakano, K.Oyaizu, H.Nishide, E.Tsuchida: "Ion-exchange and Apparent Diffusion Coefficients within Cationic Polysulfonium Coatings Containing Ferricyanide"J.Macromol.Sci.. A40. 37-47 (2003)
• [文献書誌] K.Oyaizu, E.L.Dewi, E.Tsuchida: "Coordination of BF_4^-to Oxovanadium(V) Complexes Evidenced by the Redox Potential of Oxovanadium(IV/V) Couples in CH_2Cl_2"Inorg.Chem.. 42. 1070-1075 (2003)