部位特異的MT1-MMP阻害剤の探索

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14703037
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 中尾 洋一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60282696)
• キーワード: MMP / 海洋無脊椎動物 / 阻害剤 / がん / 転移 / 血管新生

研究概要

MT1-MMPはがんの浸潤や血管新生に深く関わることが知られるMMPの一種である。MT1-MMPはMMP2、TIMP2、CD44分子とともに細胞の浸潤突起上で複合体を形成することで細胞の運動を制御していることが明らかとなっている。
平成14年度の本研究においては、海洋無脊椎動物由来の抽出物サンプルの脂溶性・水溶性画分についてMT1-MMP/TIMP2およびMT1-MMP/CD44間の相互作用阻害活性スクリーニングを行い、この複合体形成を阻害する化合物の探索を試みた。前者については脂溶および水溶性画分あわせて2526サンプルについて調べ、22サンプルに強い活性を認めた。一方、後者については661サンプルについて調べ、22サンプルに強い活性を認めた。
MT1-MMP/CD44間の相互作用阻害活性スクリーニングで強い活性を示した3種のサンプルから活性物質の精製を試みたところ、得られた活性成分はすべて共通のユニットを有するアルカロイドであった。本化合物はIC_<50>20-30ng/mLと非常に強い阻害活性を示す一方、ヒト子宮がん由来HeLa細胞に対する細胞毒性はIC_<50>で500ng/mLであった。
また、本研究で行うタンパク質-タンパク質相互作用阻害アッセイにAlphascreen(TM)を導入した。本装置により組み換えタンパク質とそれに対する抗体があれば手軽にタンパク質-タンパク質相互作用を検出できるため、現在組み換えタンパク質およびモノクローナル抗体を入手してアッセイを立ち上げ中である。
今後はこれまでに本化合物の化学構造を明らかにして行くとともに、新たに導入したアッセイ系を用いて活性化合物の探索を行う。

研究成果

• [文献書誌] Fujita, M. et al.: "Callysponginol sulfate A ; an MT1-MMP inhibitor isolated from the marine sponge Callyspongia truncata"J.Nat.Prod. (印刷中).
• [文献書誌] Nakao, Y. et al.: "(Z)-Sarcodictyin A, a new highly cytotoxic diterpenoid from the soft coral Bellonella albiflora"J.Nat.Prod. (印刷中).
• [文献書誌] Fujita, M. et al.: "Sodium 1-(12-hydroxy)octadecanyl sulfate, an MMP2 inhibitor, isolated from a tunicate of the family Polyclinidae"J.Nat.Prod. 65. 1936-1938 (2002)
• [文献書誌] Nakao, Y. et al.: "Callysponginic acid, a polyacetylenic acid which inhibits α-glucosidase, from the marine sponge Callyspongia truncata"J.Nat.Prod. 65. 922-924 (2002)
• [文献書誌] Kimura, J. et al.: "Kulokekahilide-1, a cytotoxic depsipeptide from the cephalaspidean mollusk Philinopsis speciosa"J.Org.Chem. 67. 1760-1767 (2002)
• [文献書誌] Takada, K. et al.: "Nobiloside, a new neuraminidase inhibitory triterpenoidal saponin from the marine sponge Erylus nobilis"J.Nat.Prod. 65. 411-413 (2002)