一酸化窒素(NO)は合成酵素NOSの活性によりアルギニンから合成され標的細胞の可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、細胞内cGMPレベルを上昇させる。ザリガニやコオロギの神経節において一酸化窒素は神経修飾作用を持ち、神経の可塑的な性質の形成に関与していると考えている。そこで、ザリガニやコオロギなど無脊椎動物の神経節を用いて組織化学的に一酸化窒素産生細胞、一酸化窒素の標的細胞の局在をまず確かめた。 1.一酸化窒素産生細胞はanti-uNOS免疫染色法と、NADPH-diaphorase組織化学染色法で特定した。標的細胞は一酸化窒素供与剤により誘導されたcGMPをanti-cGMP抗体を使い免疫染色法で染色し特定した。2.Anti-cGMP抗体を用いて一酸化窒素の標的細胞を蛍光色素で標識し、共焦点レーザー顕微鏡(備品として購入)を用いて特定し、中枢神経系の神経地図を作成した。3.さらに、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、一酸化窒素産生細胞が実際に一酸化窒素を放出するか、一酸化窒素感受性色素(DAF-2DA)を使って光学的な方法で解析を進めている。 今後は、感覚神経束を電気刺激し、刺激前後で一酸化窒素の濃度がどう変化するか解析するとともに、同定神経回路網においてNO-cGMPシグナル伝達系がどのような役割を担っているか、神経の可塑的な性質を形成するのにどう働いているか解析していく。 これまでの成果は国際学会(FENS2002)及び国内学会で発表し、また、その一部は国際学会誌に論文として発表した。
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