研究概要 |
枯草菌等グラム陽性菌のアスパラギン合成は研究の例がなく、その機構と生理的意義の解明が待たれる。本研究課題は、枯草菌ゲノムに見出された3種のアスパラギン合成酵素様遺伝子asnB,asnH,asnOの発現調節と生理的意義の解明を目指す。本年度はasnHの発現調節機構の解析、asnOの機能解析、ならびに試験管内での各遺伝子産物のアスパラギン合成酵素活性評価系の構築を行った。 asnHを含むオペロンは、細胞内の栄養状態を感知するCodYと遷移期の(胞子形成開始期を含む)遺伝子発現を司るArbBによって転写調節されることが、昨年度までに判明していた。今年度は、このオペロンの転写産物の5'-UTRに存在する3回リピート配列(各約120bp)が、上記の調節に関与しているかどうか検討した。その結果、3回リピート配列はCodY,AbrBどちらの調節にも関係しておらず、むしろ転写産物を安定化させる機能を担うことが示唆された。 放射ラベルされたアスパラギン酸を基質として大腸菌や枯草菌の細胞抽出物を作用させ、生産されるアスパラギンを定量するアッセイ系を確立した。その結果、asnBは対数増殖期に実際にアスパラギンを合成していることを強く示唆する結果を得た。 上記のアッセイ系を利用して、asnOの担う胞子形成期のアスパラギン合成活性を評価した結果、asnOが担うアスパラギン合成活性は非常に弱いことが判明した。また、asnBをasnOに代えて発現させた場合にはアスパラギン合成の増強が見られたが、asnBの発現はasnO欠損による胞子形成不全は極僅かしか補うことができなかった。即ち、asnOの胞子形成への寄与はアスパラギン合成以外の何らかの機能によるものであると示唆された。
|