研究概要 |
この研究の目的は,森林の中での二酸化炭素の垂直方向の分布状態とその形成メカニズムを知ることです。特に,尾根から谷を含む二次元の空間分布を把握しようとする試みは今までにない新しいものです。二酸化炭素はご存じの通り地球温暖化をもたらすガスの一つです。森林は二酸化炭素を吸収しますが,生物の集まりであるために放出もしています。このような森林における二酸化炭素の複雑な挙動を把握するために,タワーによる測定が世界的に行われていますが,この方法は何百メートル四方以上に平坦な森林でしか使えません。しかし九州では森林は平らでない,尾根や谷を含むいわゆる「山」にしか残されていません。そのようなところでは二酸化炭素は平地林とは異なる挙動をしているかもしれません。例えば,尾根と急な斜面では二酸化炭素を吸収を担っている植物の量が違うために濃度に違いがあるかもしれません。また,二酸化炭素は重いので谷沿いにたまっているかもしれません。この研究ではそのような空間分布を把握するために,常緑広葉樹林からなる0.7haの小流域に尾根から尾根に谷をまたぐように長さ30mのワイヤーを張り,それに10個の空気吸収口をぶら下げて壁状に配置し,二酸化炭素濃度を同時に測定します。またこの空間分布をもたらす原因である植物個体の二酸化炭素の吸収すなわち光合成を直接・間接に測定する予定です。
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