研究概要 |
下痢性貝毒の原因渦鞭毛藻であるDinophysis spp.の葉緑体起源生物の出現を調査することを目的とし、本年度は蛍光核酸プローブの開発およびその特異性の検討を行った。 Dinophysis葉緑体小サブユニットrRNA遺伝子(pSSU rDNA)およびリブロース2リン酸脱炭酸酵素大サブユニット遺伝子(rbcL)の塩基配列と、近縁のクリプト藻培養株のそれらを比較し、Dinophysis葉緑体に特異的な蛍光核酸プローブを作製した。本プローブの特異性を検討した結果、Dinophysis spp.の葉緑体のみに極めて感度良く結合すること,を確認した。 本プローブを用いたfluorescent in situ hybridization(FISH)法により、越喜来湾内外におけるプローブ結合性のナノプランクトンの出現を調査した。同時にD.fortiiのin vivo蛍光スペクトルから葉緑体補助色素であるフィコエリスリンの相対含量を求め、プローブ結合性のクリプト藻類の消長とD.fortii葉緑体量の増減との関係を考察した。その結果、葉緑体領域にプローブが結合するクリプト藻類の出現が現場海水において認められた。このクリプト藻類の細胞数と相関して、D.fortiiのフィコエリスリン含量が増減する傾向や、このクリプト藻類が高密度に出現した後に、D.fortiiの細胞数が増加する傾向が確認された。水系分析の結果、このクリプト藻類は津軽暖水と、それと沿岸表層水の混合水塊に出現することが明らかとなった。
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