動的運動時に深部体温や皮膚温などの温熱性要因の上昇に先行して、発汗量が増大することが報告されている。動的運動時における生体反応に影響を与える神経性の入力として、セントラルコマンドと筋からの求心性入力が挙げられ、おそらくこれらのいずれかもしくは両方が運動初期の発汗反応に関与しているものと考えられる。本年度の研究では、筋からの求心性入力の影響について注目して検討した。 健康な男女の若年成人の被験者を対象とし、中および高強度の前自転車運動負荷後に、5分間の中強度運動を負荷し、その時の発汗および皮膚血流反応を検討した。また、高トルクモーターを用いて、同様の実験を片脚自転車運動でも実施した。この実験においては、前運動を片脚にランダムに負荷し、前運動と同脚または逆脚による主運動中の発汗反応を比較検討した。実験は、環境制御室内で実施され、本実験前の簡易テストで、各被験者の無毛部の発汗が軽運動では発現するが、安静状態で発現しない環境温度を確認し、制御室内の温度を調節した。 いずれの実験においても、高強度前運動後の発汗反応は、中強度運動後のそれよりも促進された。しかし、主運動前の深部体温の安静レベルが高強度前運動実験の方が高い値を示していたので、高い深部体温が発汗を促進した可能性が考えられた。しかし、片脚自転車運動の実験において、前運動を負荷した脚側で主運動を実施したときの発汗反応が、逆脚で主運動を行った場合よりも、より早くかつ大きく増加した。このとき、両者の深部体温等の変化は同様であった。同様の結果は、前運動が高強度であっても中強度であっても認められた。このことから、安静時の深部体温のレベルに関係なく、前運動によって発汗反応が促進されたことが示唆された。
|