電位依存性Naチャネルの細胞膜発現調節機構におけるシャペロンの役割を解明するために、発生学的に神経堤に由来する培養ウシ副腎髄質クロマフィン細胞を用いて実験を行い、以下の結果を得た。 (1)熱ショック蛋白90(HSP90)をゲルダナマイシンによって阻害すると、Naチャネル発現量は変化しないが、Naチャネルの機能は亢進する。 (2)高濃度グルコースにより細胞膜におけるNaチャネル発現量は変化しないが、Naチャネル機能は低下する。 (3)糖鎖付加をテュニカマイシンによって阻害すると、細胞膜におけるNaチャネル発現量は減少する。 現在、これらのメカニズムを詳細に解析中である。 また、本研究に関連して、以下の3つの新たな調節機構を解明した。 i)Insulin-like growth factor-1(IGF-1)によるNaチャネルの細胞膜発現調節機構 IGF-1の長期処置は、Glycogen synthase kinaseの活性抑制を介して、Naチャネルの細胞膜発現量を増加させる。 ii)シャペロンによるIGF-1受容体の発現調節機構 小胞体におけるIGF-1受容体のモノマーからダイマーへの生合成過程には、Hsp90活性が必須である。 iii)Acetoacetateによるインスリン受容体の細胞膜発現調節機構 Acetoacetateの長期処置は、インスリン受容体のmRNA安定性を低下させることにより、インスリン受容体の細胞膜発現量を減少させる。
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