研究概要 |
我々が構築したES細胞からの血管の分化系を用いて、血管構成細胞(血管内皮細胞および壁細胞)の分化過程において特異的に発現する遺伝子群を同定し、血管発生分化の分子機構の解析を行うことを目的とした研究である。当初、分化初期の血管内皮細胞や壁細胞とその前駆細胞であるFlk1陽性細胞を用いて、サブトラクション法により血管分化特異的遺伝子群を同定すること、および同定した候補遺伝子の機能をセンスまたはアンチセシスcDNAのEs細胞への導入により検討することを計画した。現在までにFlk1陽性細胞とFlk1陽性細胞から分化誘導1日後の内皮細胞との間でサブトラクションライブラリーを作製し、内皮分化に特異的発現を示す遺伝子群を約30個同定している。また、新たにDNAチップを用いた解析を加えることにより、現在までにマウス約36,000個の遺伝子の中から、約200個の内皮細胞分化特異的発現を示す候補遺伝子群を同定している。今後は、これら候補遺伝子のin vitroでの機能解析を行う予定である。機能解析は全長DNAをクローニングする必要がなく、アンチセンス法よりも強力で安定しているRNAi(RNA干渉)を用いて行う予定であり、現在までにすでにES細胞で発現誘導することができるベクターを用いたsiRNA(short interfering RNA)発現システムを構築し、標的遺伝子の発現抑制ができる予備的結果を得ている。siRNAによる候補遺伝子の機能阻害の内皮細胞分化における作用を検討し、内皮細胞分化に関与する遺伝子群の網羅的同定を行い、内皮細胞分化の分子機構を明らかにする予定である。
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