研究概要 |
本年度研究では抑制系細胞として調節性T細胞(Tr細胞)に注目し、その特異的細胞表面分子の同定に関する基礎研究とCD25陽性細胞除去と経皮免疫法を組み合わせたメラノーマ免疫治療法の基礎実験をマウスを用いて行った。Tr細胞特異的な細胞表面分子の同定には、cDNAサブトラクション法とRNAアプタマーによる同定を行うことを考えており、その材料となる細胞をDO11.10マウスの脾細胞からOVA特異的な抗原刺激により分化誘導させ作製した。Tr細胞はIL-10とOVAペブチドを用いた培養で誘導し、現在そのハイブリドーマを作製中である。コントロールであるTh1細胞はCD45RB+脾細胞をIL-2,IL-12,anti-IL4 mAb, OVAペプチドを用いて分化増殖させ、Th2細胞はCD45RB+脾細胞をIL-2,IL-4,anti-IL-12 mAb, OVAペプチドを用いて分化増殖させた。現在それらのハイブリドーマも作製中である。一方、抗CD25抗体投与(500μg/mouse)による抑制性細胞除去とTRP-2ペプチド(100μg/ml/4cm^2)による経皮免疫療法(耳翼と腹部TS後24h以内の塗布)の併用についての基礎的研究では、まずB16メラノーマ細胞をB6マウスに移植後1週間目における経皮免疫療法と抑制性細胞除去の併用を行ったが、この時期の併用治療では経皮免疫効果と抑制細胞除去による抑制除去効果の相乗効果が見られ、どちらか一方だけの治療法または無処理のコントロールよりも明らかな腫瘍増殖抑制が見られ、30%程度のマウスで完全な腫瘍退縮が観察された。ところが移植20日目における併用ではCD25+細胞除去操作による効果は全く見られず、経皮免疫法による腫瘍増殖抑制が低頻度(15%)で見られるに留まった。今後は増殖期にある腫瘍の担がんマウスで起こる免疫抑制細胞の動態を詳細に観察すること、さらにTr細胞特異的分子が同定されれば、それを用いた抑制性細胞除去効果についても検討を行いたい。
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