研究概要 |
オレキシン受容体は、最近唾眠覚醒にオレキシンが重要な役割を演じていることが示唆されているGタンパク結合受容体である。一方、麻酔薬はすべて就眠作用をもち、その機序に興味が持たれているが、いまだにその作用機序は完全に解明されていない。麻酔中の動物の脳内にオレキシンを注入すると、麻酔から直ちに覚醒する事が研究者間で観察されている。これらの事からオレキシンと麻酔就眠作用との間で何らかの関係が考えられるが、詳しい検討は全くなされていない。一方、アフリカツメガエル卵母細胞発現系はCa^<2+>依存性Cl^-チャンネルをもち、PLCを介した細胞内Ca^<2+>の変動により、容易にGq蛋白結合受容体への薬物の反応を電気生理学的に解析でき、更に、細胞内リン酸化酵素の解析も同時にできるため、麻酔薬のG蛋白結合受容体に対する作用を解析する手段として非常に有効である。今年度の研究においては昨年に引き続き、オレキシン受容体の細胞内情報伝達系の解明とこれらの麻酔機序との関わりを明らかとするために、(1)オレキシン受容体(オレキシン受容体A,オレキシン受容体B)がどのタイプのG蛋白を介した細胞内情報伝達系を形成しているのか探るために、オレキシン受容体RNA(A及びB)をアフリカツメガエル卵母細胞発現系に注入し発現させ、オレキシン受容体がGq蛋白を介しているのか確認した。またGi/GqのキメラG蛋白RNAと同時にオレキシン受容体RNAを注入し発現させ、オレキシン受容体がGq蛋白を介しているか確認した。(2)次に、オレキシン受容体RNAをアフリカツメガエル卵母細胞発現系に注入し発現させ、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬がオレキシン受容体(A及びB)にいかに作用するかを検討した。その結果オレキシン受容体(オレキシン受容体A,オレキシン受容体B)は吸入麻酔薬によって臨床濃度で抑制されていることが明らかとなった。さらに予備的な結果であるがオレキシンAに関しては吸入麻酔薬や静脈麻酔薬が抑制をしている結果を得た。現在、その機序を検討中であり、来年度はこれらを機序を中心に明らかにしたいと考えている。
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