昨年度までの研究で、スギ花粉の主要アレルゲンCry j 1を構成する遊離型糖鎖のCry j 1に特異的なIgEおよびT細胞応答への関与について検討し、糖鎖を用いた新規治療法の可能性について考察し、その結果はChnical and Experimental Allergyに収載された。さらにヒノキ科ビャクシンの主要アレルゲンである。Jun a 1の糖鎖構造を決定し、この糖鎖が免疫活性を有するルイスa糖鎖を含むことを解明した。その結果はBioscience Biotechnology Biochemistryに収載された。その他にも糖タンパク抗原であるコナヒョウニダニ抗原、マンソン住血吸虫卵抗原やフォスフォリパーゼA2の鼻アレルギー感作に与える影響を解析し、それぞれAllergy、Clinical and Experimental Allergy、International Archives of Allergy and Immunologyに収載された。 本年度はスギ花粉を構成する多糖に注目した。代表的な多糖としてペクチンを取り上げ、スギ花粉よりペクチンの精製を試み、ペクチンの免疫活性作用について検討した。その結果、スギ花粉を構成するペクチンはマウス腹腔細胞を刺激し、サイトカイン産生を誘導した。またCry j 1を構成する糖鎖構造の再同定を試みた。その結果、Cry j 1を構成する糖鎖にはこれまでに報告があったものの他にJun a1などと同様にルイス型糖鎖を認めることが明らかとなった。さらにマンノース結合レクチン(MBL)のスギ花粉症への関与について検討した。MBLはCry j 1を構成する糖鎖と結合することが明らかとなったが、血清MBL値とスギIgE値は相関せず、また抗MBL抗体の添加はCry j 1特異的T細胞応答を抑制しなかった。
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