糖尿病網膜症において酸化ストレスが増加し、それによる血管障害が血管透過性の亢進による視力障害に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている。我々は、酸化ストレスによる血管内皮細胞への障害をアンギオポイエチン1(Ang1)により抑制可能か、またその機序について検討した。方法:培養ブタ網膜血管内皮細胞(PREC)に過酸化水素およびAng1を負荷し、アポトーシスについてTUNEL法、Caspase3の活性により評価した。細胞内シグナル伝達の検討は、リン酸化特異的抗体を用いたWesternblot法により行った。キナーゼの詳細な検討は特異的薬理的阻害剤及びアデノウイルスベクターによる強制発現を用いた。結果:過酸化水素により、JNKを介したTUNEL陽性細胞の増加、Caspase3の活性化が認められ、Ang1は、それらを用量依存性に抑制した。また、過酸化水素は、SEK1/JNKを時間依存性にリン酸化したが、Ang1はそれらを抑制した。またPI3kinase特異的阻害剤、Aktのドミナントネガティブ変異体を用いたところ、SEK1/JNK経路に対する抑制効果は打ち消され、PI3kinase/Akt経路を介していると考えられた。結論:Ang1は、酸化ストレスによるSEK1/JNK経路のリン酸化、及び内皮細胞のアポトーシスを抑制した。これにより、Ang1により糖尿病網膜症における内皮紳胞の消失、無血管野形成を予防できる可能性が示唆された。
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