研究概要 |
従来の治療法に抵抗性を示す腫瘍に対して、近年分化誘導療法などの新しい治療法の開発が試みられている。Peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ)はリガンド依存性転写因子であり、脂肪細胞分化のマスター遺伝子であることが明らかにされている。われわれは既に口腔癌培養細胞におけるPPARγの発現様式およびその合成リガンドの抗腫瘍活性(in vitro)を明らかにしており、さらに合成リガンドのPPARγ非依存性の抗腫瘍活性についても報告した。そこで、本研究においてはヒト唾液腺癌細胞のヌードマウス背部皮下腫瘍モデルを用いて、PPARγ合成リガンドのin vivoにおける抗腫瘍活性とその分子メカニズムにつき検討した。まず、微小転移および浸潤能を正確に把握するためにヒト唾液腺癌培養細胞にgreen fluorescence protein (GFP)を導入したGFP安定発現細胞株をヌードマウス背部皮下に移植したのち、PPARγ合成リガンドtroglitazoneを腹腔内投与したところ、著明な腫瘍増殖抑制効果を示した。さらに、同ヌードマウス腫瘍よりtotal RNAを抽出し、マイクロアレイを用いてヒト全遺伝子の発現解析を行った。Troglitazone処理により約1,500種類の遺伝子の発現変化が認められた。その中には、p16、p27のような細胞周期停止に関与する分子やNBS1,BLM,RADなどのDNA修復に関与する分子等が含まれていた。さらに、機能未知遺伝子も多数含まれており、現在RNA interference技術を用いて機能解析を行っている。
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