平成14年度の研究目標の一つである生骨組織の光学的3次元構築が行われた。まず、摘出したニワトリ胚頭蓋骨をニワトリ骨細胞特異抗体OB7.3をふくむ培地で1時間培養した。その後、蛍光標識した2次抗体を含む培地で30分間培養し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて骨組織中の生きた骨細胞を蛍光的に可視化できることを確認した。OB7.3は骨細胞への特異性が非常に高く、細胞突起の細部に至るまで観察することができた。また、微分干渉顕微鏡により、骨芽細胞、骨小腔を同時に観察することができたため、骨芽細胞から骨細胞にいたるまでの細胞を生きた状態で観察することが可能であると考えられた。また、同様の方法を用いれば細胞内カルシウムインディケーターであるFluo3を骨組織中の骨細胞に取り込まし、細胞内カルシウムの動態を観察することが可能であると思われた。しかし、共焦点顕微鏡の感度の問題もあり、実験系については現在のところ検討中である。 また、生骨組織中の細胞の細胞内カルシウムの動態を検討する前に、骨細胞、骨芽細胞、間質細胞を骨組織より取り出し培養し、流体剪断応力を負荷してこれらの細胞の細胞内カルシウムの変化を追跡している。これにより、骨系細胞の細胞カルシウムの濃度、オシレーションの頻度などの基礎的な細胞内カルシウムの動態を得るとともに、得られた結果と今後得られる生骨組織での結果を比較して、骨細胞の周囲骨基質の存在が骨中の細胞の機械的応答能に与える影響を検討する予定である。
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